近赤外線でみる双子座流星群ライブ中継 NILOG: Near-Infrared Live Observation of Geminid meteor shower
他とは違ったことをやってみよう
まずはYouTube ライブ配信、沢山の方のご視聴ありがとうございました。過去最大数の方(視聴回数4500回)にご覧頂きました。また、Twitter スペースで6時間ものトークセッションにお付き合いいただきましたMasa'sAstroPhotography(配信機材沼)さんにお礼申し上げます。
最近の流星群ライブ配信はやや過渡期になっており、星空の最高峰と断じても良いマウナケア山からの中継や、高感度機材を使用し空が暗い沖縄からの中継などなど、魅力的な配信者が多数いる中で、東京の明るい空のもとで普通にライブ配信など行ってもまったく面白みがありません。そこで他の配信ではどこもやってない、無い何か面白い事をやってみました!
流星の色は何色?
普段目にする流星は黄色や緑色をしていますよね。スペクトル観測を行った報告を見ると、マグネシウム(Mg 518nm)やナトリウム(Na 589nm)輝線が目立っており、これらの波長で輝いていることがわかります。しかしもっと面白いことに、近赤外線領域の780nm付近の酸素輝線が非常に突飛つして光っていることがわかりました。恐らくこれは高層大気の酸素分子が流星物質の大気圏突入によって発光しているのではないかと思います(注:詳しく調べていませんんので、解説できる方いらっしゃいましたらコメント欄でお願いします)。
流星のスペクトル観測結果。
マグネシウム(Mg) 518nm
ナトリウム(Na)589nm
眼視で見えるのは恐らくこの2つの波長が主体(黄色と緑)。
これ以外に近赤外線領域では特に730nmの輝線が高い。https://t.co/MfTejqDD9P https://t.co/A6XrllWzsK pic.twitter.com/cxVxDfq1F4
— RYO@天文楽者 (@HDV_blog) December 13, 2021
→730nmとTweetしていますが、780nmですね(^^;)
ふむふむ、近赤外線領域か!光害が極めて酷い東京でもリアルな天の川を余裕で映し出す技術はすでに取得済み。今回はこの世界でも前例がない(と思われる)近赤外線領域でふたご座流星群のライブ配信を行ってみました。タイトルはNear-InfraredLive Observation of Geminid meteor shower。略して「NILOG」!
撮影機材
過去に家から配信した時、家の構造上あまり広角で撮影ができていませんでした。今回はその欠点を補うべく、脚立に赤道儀をマウントすることで高さを稼ぎ、家の壁を超えて広大な視野を稼ぐことに成功しました。ただ、流星を多く捉えるためには地平線方向を撮影するのが王道です。自宅では残念ながら天頂方向のみの撮影に限られてしまいます。
脚立にマウントした赤道儀! pic.twitter.com/bXA9aBnSM1
— RYO@天文楽者 (@HDV_blog) December 13, 2021
なお、脚立への取り付けは耐荷重30kgを誇る9.Solutions セイバークランプ 9.XS1005を使用しています。
他、カメラやフィルターは過去に使った近赤外線領域撮影機材を使用し(ASI294MCPRO, サイトロンIR PRO 640フィルター)、30秒露出毎の撮影像をリアルタイムでYouTubeへ配信しました。この方法は、残念ながら動く流星映像はお届けできませんが、30秒間毎に捉えた流星をじっくり観察することが可能です。(この方法をNear-Infrared Live Observation (NILO)と呼ぶことにしました)
近赤外線領域で流星は写るのか?
予想通りの流星を移すことに成功しました。ただ可視光領域での撮影を同時に行っていないため、数や光度などの比較が出来なかったのですが、確実に流星を捉えることができました。
この方法で特徴的なのは、映し出されている星の数は膨大な数。実際、下の画像の右側には、冬の天の川も写っています。
配信画像の比較明コンポジット
流星が映し出された画像をコンポジットしたものを紹介します。流星のコンポジットは初めて行いました。こんな画像を見ると一度に沢山の流れ星が見えたのかと勘違いしてしまいそうですね。これは数枚の画像を重ねた物です。
コメント