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国立天文台三鷹キャンパスのすぐ側でオメガ星団(ω星団)を撮る

東京内陸部でオメガ星団の撮影は難易度が高い

今回は難易度が高いω星団の撮影です。

ω星団(NGC 5139、M118)は、ケンタウルス座にある大型の球状星団で、肉眼で見ることができる数少ない球状星団のうち最大級のサイズで、視直径は23′もあります。月の平均視直径が31′なので、その巨大さがわかると思います。


月とω星団の比較。視直径は、ほぼ同じ大きさ

このω星団、春頃に見ることができるのですが、東京では南中高度がわずか6°程度と超低空なため、内陸部の平地ではビルや街灯などで邪魔されてしまい、見ることが非常に困難な天体の一つです。

今回、撮影場所を色々検討しました。東京湾岸沿いが南側の空が暗く、水平線までみわたせると思われるのですが、夜間に車を止めて望遠鏡を持っていける場所を見つけることが出来ませんでした。もっと時間をかけて探せばあるのでしょうが、私の生活環境から現地への往復時間を考慮すると困難なことがわかりました。

さらにタワーマンションの上の方でも見えるでしょう。でも知り合いにタワマンに住んでいる人がいませんw 他にも八王子の山間部なども検討しましたが、深夜に車で行ける南側低空が見える場所はありません。

そこで色々Google Mapsを検索した結果、なんと国立天文台三鷹キャンパスの直ぐ側にベストな場所を発見しました。そしてω星団を捉えることに成功しました!





南中時のω星団。1メモリが高度5度です。©SkySafari Pro

国立天文台三鷹キャンパスからは(多分)見えないω星団

東京都三鷹市大沢にある国立天文台三鷹キャンパスは、丘陵地帯にあるものの、キャンパスは深い森に囲まれており、南天超低空のω星団は恐らく見えないはずです。
※標高を稼げる自動光電子午環のドームの上や高いビルのアルマ棟、中央棟の屋上なら見えるかもしれません。それから、天文台開台の頃、敷地内に背の高い木が無かったと思われる頃には見えたかもしれません。いずれも私は天文台関係者では無いのでわかりませんw もし見えてたらごめんなさい!


1951年頃の旧東京天文台三鷹キャンパスの航空写真。敷地内には畑が残っているのがわかります。国立天文台・天文情報センター アーカイブ新聞 (2016年10月6日 第971号)より引用


現在の三鷹キャンパス


Google Earthで国立天文台三鷹キャンパスを北側から真南方向に俯瞰してみると、キャンパス内部から南方向は深い森が邪魔をしているのがわかります。©Google Earth

ところで、天文台の南西側には調布空港があり視界が開けています。空港周辺には武蔵野の森公園があり、調布空港北端部に位置する「展望の丘」と呼ばれるちょっと小高い丘は滑走路を見渡せることができ、南側の視界は極めて良好です。ここならば、ω星団が見える可能性が高いと予想しました。



府中市と三鷹市、調布市に隣接している調布空港・武蔵野の森公園界隈。左下が調布空港で滑走路の北端に展望の丘があります。国立天文台はその東側の空白地帯。ちなみに展望の丘の住所は、天文台と同じ三鷹市大沢地区。©Google Map

ただ、唯一難点を上げると、展望の丘からみて丁度南側真正面に味の素スタジアムが位置しているため、ナイターやイベントが行われていると真夜中まで照明が点灯しており、南天低空のω星団の撮影は絶望的なのです。



展望の丘(滑走路上端右)から真南には味の素スタジアムが位置しているのがわかります。©Google Earth

1度目でω星団の撮影に成功。しかし!

最初にチャレンジをしたのが2021年3月26日。ω星団の南中時刻は午前1時頃。あまり下調べをせずに夜10時頃現地へ向かいましたが、なんと味の素スタジアムが眩しいくらい煌々と輝いているではありませんか!調べてみると、なんとサッカーU-24日本代表 × U-24アルゼンチン代表試合がナイターで開催されていたのです。金曜日なのに試合をやっているとは。。こんなことなら味スタのスケジュールを調べておけばよかった。。。

味スタのホームページを見てみると、試合は19:00キックオフ。そして試合が終わるのが21:00過ぎの予定だそうです。観客が帰り、片付けが終るのは一体何時になるのでしょうか?


そこで味の素スタジアムのアルバイト募集情報を見れば、スタッフの皆さんは何時まで働くのか?と見積もれると思いましたのでindeedで調べてみたら、
【勤務曜日・時間】 6:00~24:00の間等 ※イベントにより異なる 

・・・・。しかも今日は平日。明日も仕事ですからあまり遅くまで粘れませんし、ω星団は直ぐに地平線下に隠れてしまいます。


ナイターの照明は、午前0時になってもなかなか消えません!!国際試合だと、やはり試合会場の運営規模が凄いのでしょう。


ω星団が南中を迎えてしまう午前0時30分過ぎに、ようやく照明が消え始めました。赤道儀はすでにセットしてあったので、自動導入で撮影したところ、なんとかω星団を捉えることに成功しました!もちろんカメラセットは近赤外線仕様です。
→近赤外線領域での撮影は、都市光害や水蒸気による霞の影響を受けにくくなります。撮影対象が近赤外線領域の光を出している恒星の集まりである球状星団なので、絶対に撮影ができるはずです。

この日は満月前の月齢13の月が残っていたので、光線カブリが酷いなぁ・・・・と、この時は思っていましたが、実は原因が月ではなかった事に後日気が付きます

また、撮影に使用したレンズの焦点距離が短く、ω星団を拡大撮影できなかったので日を改めてチャレンジすることにしました。


2回目の撮影

月の条件や天候を考慮し、ようやく都合がついたのが2021年4月7日。しかし!この日も味の素スタジアムではFC東京×北海道コンサドーレ札幌のナイター試合が(泣)。水曜日ですよ??まさか試合があるとは。。

しかし今回は国内Jリーグの試合なので、早く片付けが終るだろうと思い、現地で待っていると案の定、前回のU-24日本代表戦よりもかなり早い時刻に照明が落ちました。


今回はキヤノンのサンニッパ(CANON EF300mm F2.8L IS USM)を用意。

そして撮影した結果はというと・・・・



ででん!

©RYO

CANON EF300mm F2.8L IS USM, ZWO ASI462MC, サイトロン IRPRO640フィルター, 高橋P-2 K-ASTEC自動導入改造。

期待していたほどの映りではなかった(泣)

やはり東京の内陸部ではこれぐらいが限界なのかもしれません。しかも空港の側なのでモロに風の影響を受け、300mmの望遠レンズが揺れる揺れる。その結果、撮影画像の歩留まりが非常に悪く、使えるショットがあまりありませんでした。


ところで、今日は月が出ていない(新月前の月齢24)にもかかわらず、相変わらず光線カブリが酷い事がわかりました。これは、一体何なのでしょう??

なぞの赤外線照射を受けている!

撮影が終わってカメラを味の素スタジアム方面に向けると、強烈な光がこちらを照らしていることに気が付きました!

一列にズラズラっと赤外線ライトが点灯している様子が伺えます。その一部がこちらを強く照らしているように見えます。もちろん、この光は目では見えませんし、スマホ等の一般的なカメラでは写りません。光点の右側には味の素スタジアムが周囲のライトに照らされて浮かんで見えます。ω星団はこの上を通過していきます。

つまり、強烈な光線被りは、この赤外線ライトだったのです。

教訓:空港周辺では近赤外線写真撮影は気をつけたほうが良いw

※後日、赤外線元を確認するために周囲を探索しましたが確認できませんでした。展望の丘には行ってないので確かではないのですが、あの丘へ上ってしまうと、赤外線照射を受けるのかもしれませんね(謎)。

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